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「広島恋心。プロジェクト」は紙面やウェブで読者の皆さまを対象にした
「広島」についてのアンケートを実施してきました。
結果を踏まえ、「NPO法人 ひろしまジン大学」の平尾順平学長が街の魅力や可能性を総括しました。

広島人の特徴情熱的でシャイ

 ー「クールだが実は熱い」という意見が多く寄せられました。
 これまで登場した奥田民生さん、島谷ひとみさんも話しておられました。要するに熱い思いをクールな仮面の下に秘めている人ですね。多いと思います。自分より人との和を優先するので、自分からなかなか動きだせない。ただ、誰かが立ち上がったら「一緒にやろう」と協力してくれる人が多いのかもしれません。「ひろしまジン大学」立ち上げの時もまさにそう。多くの人が協力してくれました。
 3年たち、登録者数は約1500人になりました。それぞれが広島らしい熱い心を発信できるようになればよいですね。
 ー「郷土愛が強い」とありますが、平尾さんは。
 前職で8年間、東京に住みました。広島を離れて郷土愛が一層高まりましたね。居酒屋で他の席の広島弁に思わず反応し、同席して飲み交わしたことが何度かあります。また、広島県は広島東洋カープ、サンフレッチェ広島、広島交響楽団の三つの「プロ」があることや、「じゃけん」など特徴的な方言が郷土愛を強くしていると感じます。

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広島の名物お好み焼きが最多

  ー「お好み焼き」がトップでした。
 僕もそう思います。また、これらの名物に対して広島人が誇りを持っているのも確かです。ただ、その思いに対して、売り込み下手なのが残念。よいものが多いのに、発信し切れていないのがもったいないです。例えば、アンデルセンのパンやアヲハタジャム、セーラー万年筆などが広島生まれであることは、全国であまり認知されていません。
 奥田民生さんは「小イワシがいい」といわれていましたね。有名人に限らず、県民それぞれが観光大使になって伝えていけばいいと思うんです。僕自身は友人の結婚祝いなどで〝これでもか〟と言うくらいに広島産ばかり贈っていますよ。広島カキはもちろん、西条の地酒も好評。女性には熊野の化粧筆が喜ばれますね。
 ー今後、新たな名物として注目しているものはありますか。
 最近メディアでも話題の「瀬戸田レモン」でしょうか。瀬戸内のかんきつ類は島々の環境を含め、今後の強力な観光資源になると思います。また、ひろしまジン大学を通じて気付いたんですが、伝統芸能である「神楽」のファンが、想像以上に多い。先日、広島サンプラザホール(広島市西区)で開かれた祭典は、まるで大物ミュージシャンのライブのように盛り上がり、驚きました。子どもたちが喜んで見ている様子を目の当たりにして、今後、大きなブームを起こすかもしれないと心が弾みました。

魅力スポットトップは宮島

 ー観光地・デートスポットともに宮島(廿日市市)が挙がりました。
 宮島は外からの視点を入れることで、その魅力を再確認できる場所だと思います。地元の人にとって厳島神社の海上社殿は、ごく当たり前の風景になっていますが、県外や海外の人を連れて行くと「海に神社が浮いている」「とてもきれい」と感激してくれます。
 最近、宮島で実感したことは夜の景観の素晴らしさです。島内の海岸沿いに並ぶ石灯籠(とうろう)にぽつぽつと明かりがともる幻想的な光景は心が洗われる美しさです。県内に住んでいても、夜の宮島を散策したことがある人は少ないんじゃないかな。また、最近の若者たちはデートで弥山(535 )に登るという話もよく聞きます。まずは、自らが地元の「宝」を発掘して、その素晴らしさを伝えていけたらいいですよね。
 ー宮島以外のお薦めスポットは。
 僕個人が一番気に入っているのは呉市の「とびしま海道」と尾道市と今治市を結ぶ「しまなみ海道」です。穏やかな瀬戸内海に島々が浮く景色を見ていると心が落ち着き、何ともいえない安らぎを感じます。ちなみに県外から来た人を案内する時は灰ケ峰(呉市)からの展望とセットで見てもらい、海・山・街 がコンパクトに収まった珍しい地形を実感してもらいます。
 府中市出身のタレント・アンガールズの田中卓志さんは「庄原の帝釈峡や三次の鵜(う)飼いなど、広島市内から離れた場所の魅力をもっと知ってほしい」と話していました。尾道市出身のミュージシャン・ポルノグラフィティの二人は「しまなみ海道は自転車に乗る人にとって聖地」とも言っていましたね。

広島の良さ平和を広げる教育

 ー「平和」という回答が多くありました。
 広島市は国際平和都市なので学校教育の一環として平和教育を受けて育つという文化も良いですよね。小さな頃から平和について考え、独自の平和論を持つ人が多い。ひろしまジン大学に参加する若者も「平和」というワードが話題に上がると熱く語る人がたくさんいます。ただ、平和教育も時代の流れに合わせて変化すべきだと思います。歴史を学ぶだけではなく、自分たちがどう取り組んで、どう広げていくかを考える教育にしていけたらと考えています。
 ー自然に恵まれているのも良いですね。
 日帰りで三段峡(安芸太田町)へハイキングに出掛けたり、冬は県北でウインタースポーツができたりなど、広島は都市と自然が近い。そういった意味で、子育ての場としても恵まれた環境だと感じます。自分に子どもができたら、畑仕事も釣りも体験させてあげたいな。

10年後の広島若者主体の街に

 ー明るく、美しい街になってほしいといった意見が多かったです。
 自分の街のことを〝人ごと〟ではなく〝自分のこと〟として行動できる人が増えれば実現できると思います。例えば、核家族化や過疎化などの課題に町ぐるみで取り組んだり、発信できたりするようになるなど、自分が住む場所に誇りを持って行動してほしいです。街を愛するという共通の思いを持った人が一緒になって助け合えるコミュニティーがあふれる広島になれば、それが平和な暮らしにつながります。
 ーそのために取り組むべきことは。
 今の社会は、あらゆる世代の人が「このままではいけない」と思いながら動けていない気がします。若者や女性がもっと前に出て、地域や政治を動かすことが一つの解決策です。若い人が地域のことに取り組めば、その同世代も興味を持ちます。政治もまた同様ではないでしょうか。動く人、選ぶ人が変わらないと地域も政治も変わりません。この構造を変えることで、新しい価値観が生まれ、家族や地域のつながりを大切にする社会が実現するはずです。そんな「広島らしい」街づくりを〝広島スタンダード〟として世界に発信できたらいいですね。