vo.8
誰かに話したい、広島がある
ポルノグラフィティ

広島のこと。広島のひと。

東日本大震災以降、日本は、人と人の心のつながりを大切に、復興へ向け、前へ前へと進んでいます。
そして、被災地だけでなく、それぞれの地域で、「地元」「郷土」「故郷」への想いが強くなっています。
創刊120周年を迎えた中国新聞社では、あらためて広島の素晴らしさに気付いてもらうために、様々な方の声を聞き、広島の素晴らしさを再認識する企画「広島恋心。プロジェクト」を立ち上げました。毎月1回、広島出身の著名な方の「広島への想い」を紹介しています。
Vol.8では、今年7月、ひろしま観光大使に就任し、年に5~6回は帰省するというほど広島を愛する戸田菜穂さんにインタビューしました。

広島の、食。
-広島の好きな食べ物は何ですか?
瀬戸内海のお魚おいしいですよね。私はお寿司が大好きで、広島に帰るとお寿司屋さんに行きます。『とくみ鮨』(広島市中区)というお店が、父の行きつけで、そこにはよく行きますね。お昼も営業していて、この前は94歳のおばあちゃんと一緒に食べに行きました。瀬戸内海ならではの、夜泣き貝とか、東京では食べられないネタがあるので、うれしいですね。白身魚も好きで、そういうのをつまみながら、お酒を飲んだりしています。
-お酒、好きですか?
はい。父と一緒に流川とか薬研堀に行ったりもしますね(笑)。
-他によく行くお店はありますか?
和食の『玉の』(広島市中区)にもよく行きます。カウンター割烹みたいな雰囲気で、すごくおいしいです。あとは、実家の近所においしいお魚屋さんがあるので、そこで買ったお魚を母にお刺身三昧にしてもらったりしています。広島に帰ったら、とにかく魚っていう感じです。母につくってもらう小いわしの天ぷらも大好きです。
-お好み焼きは好きですか?
お好み焼きは家で食べる派です。日曜日の夜によく、家族で家のプレートで焼いて食べていました。弟がつくるのがうまくて、この前伝授してもらいました。ひっくりかえすのが難しいんですよね。

広島の、風景。
ー広島で好きな風景はありますか?
川が素敵だなぁと思います。電車道も好きです。宇品港のオシャレなカフェとか、黄金山や平和公園の桜も好きです。
ーひろしま観光大使に就任されましたが、どこか観光に行きましたか?
この間、主人の夏休みを利用して、鞆の浦(福山市)と境ガ浜(尾道市)に行ってきました。実家で子どもを預かってもらって、車で行ってきました。どちらも2泊したんですけど、すごくよかったですよ。鞆の浦は、みなさんからいい場所だって聞いてたんですけど、今まで一度も行ったことがなかったんです。石畳の道があったり昔ながらの風情が残っていて、お気に入りの風景がいっぱいでした。境ガ浜では、いいホテルがあるって勧められて行ってみたんです。ほんとうに素敵でした。芝生が広がっていて、その向こうに船のドッグが見えて、サンセットも見える。プールもあるし、イタリアンと和食のレストランもあって、素晴らしい場所でした。こんなに素敵な場所があるなんて驚きでした。
ーご主人の広島の印象は?
主人の出身は山梨県なので、自然は見慣れてるんですけど、山が穏やかで雰囲気がいいって言ってましたね。のどかというか、緑がこんもりしてますよね。その辺が、山梨の山とは違う雰囲気みたいです。あと、魚がおいしいことを喜んでいました。
ー広島に住んでいた頃の思い出の場所は?
高校生の頃、元旦に日の出を見に行こうと黄金山に行ったり、色んなところに行きましたね。おじいちゃんが健康のために、よく黄金山に登っていたので、私たち家族にとっては馴染みのある山なんです。あと『とうかさん』とかお祭りも好きでしたね。
ー将来、お子さまに見せたい風景はありますか?
この前はお留守番だったので、鞆の浦の昔ながらの風景を見せてあげたいですね。ちょっと迷子になってみたくなるような路地がいっぱいあって素敵だったんですよ。瀬戸内海の島も好きなので宇品港から船に乗って連れて行きたいですね。島めぐりとか日帰りで楽しめる旅が広島にはいっぱいあるので、子ども連れにはいいですよね。あと、路面電車にも乗せてあげたいし、宮島にも連れて行ってあげたい。

地元、広島。
ー地元のチームを応援しますか?率直にカープファンですか?
えーっと……普通です(笑)。あ、でも、子どもの頃は、旧広島市民球場とか行ったりしてましたよ。あと、バスセンターからバスに乗ると、試合がチラッと見えたんですよ。ああいうの、いいですよね。
ーこのプロジェクトのインタビューでは、結構カープトークが盛り上がるんですよ。
えっ。じゃあ私も、ファンって言っておこうかな(笑)。地元なので、もちろん勝つとうれしいですよ(笑)。
ー広島弁に戻ることはありますか?
家族と話したりすると、すぐ戻ります。ナレーションの仕事とかでも訛っているってよく言われますよ。なかなか広島弁はぬけないです。
ー広島弁はどんな印象ですか?
広島弁もいろいろあって、おじいちゃん、おばあちゃんが話す広島弁はなんだかかわいく聞こえます。私の実家辺りでは訛りが強いので、貴重な言葉だなぁと感じます。もう、平安の時代の言葉みたいなんですよ。蛇のこと、口縄って言ったりするんで(笑)。ある意味、気取りがなくて、いいと思いますね。思ったことがそのまま言葉になる感じがします。

広島の、人。
ー広島人ってどういう傾向の人が多いと思いますか?
私の家族だけかもしれないですけど、裏表がない印象があります。わりと顔に出ちゃう感じ。なんだか、わかりやすいなぁと思います。大阪とは違う雰囲気なんですけど、声をかける文化もある気がします。街に気さくな人たちが多いですよね。私は、学校の方針で必ず街の人に挨拶していました。学校に行く時は「行ってまいりまーす」、帰りは「ただいま帰りましたー」って大人の人に声をかけるんです。今はなくなっちゃったみたいですけど。地域で子どもを育てている感じが好きでした。「いってらっしゃい」、「おかえり」って挨拶を返されると子供心にうれしかったのを覚えています。バスに乗るときも「お願いします」とか「ありがとうございます」ってちゃんと挨拶してました。
ー広島人は熱い人が多いと思いませんか?
うーん。たしかに、陽のイメージはありますね。陰ではないです。それは、気候が関係している気がします。穏やかな気候ですから。夕日もきれいだし、気候に耐えて生きている土地ではないので、明るい感じはありますよね。

広島への、恋心。
ー年に5〜6回帰りたくなる、広島の魅力って何でしょう。
もちろん家族がいる場所っていうのもあるんですけど、ほっとするし、お魚がおいしい(笑)。あと、空気もおいしい気がします。よく散歩に出かけるんですけど、私の家の近くの川には今も白鷺が飛来したりとか、カワセミがいたりするんですよ。私の住んでいた場所は、昔ながらの雰囲気があって、ちょっとした小京都っぽい感じがするんですよ。だから、自分の通学路だった道をぼんやり歩いてみたりする時間が好きですね。観光地では京都とか、萩とか、金沢とか好きなんですけど、何で好きなんだろうって考えてみると、どこか地元の雰囲気に似てるからなんじゃないかって思うようになりました。最近、近所をしみじみ散歩してみて、私にはこういう風景が染み付いてるんだなぁって思うところがありました。
ー散歩していると、戸田菜穂さんって気づかれますよね。
「帰っとられるんですか」とか気軽に言われますね(笑)。私も「はーい」みたいな感じで気軽に返事してます。

広島の、未来。
ー今後、広島がこういう街になってほしいという想いはありますか?
私は、2月に出産した後、東京の産後ケアセンターに入ったんです。そこは、まだ子育てに不安があるお母さんたちが、母子ともに入所して、ベテランの助産師さんから子育てを丁寧に教えてもらうんです。お母さんの不安を解消してくれる、すごくやさしい気遣いのある施設なんです。ゆっくりお母さんになってくださいって書かれてました。私はすごく助かったので、広島にもそういう施設が増えればいいなぁと思います。広島で子どもを産みたい、子育てをしたいと思う人も増えると思います。やっぱり、子どもたちがこれからの広島を担うわけですから、そういう施設が充実すると、子どもがいっぱい増えていくと思うんですよね。そういえば、広島でタクシー乗って、降りるときに赤ちゃん連れなので1割引きですって言われて、うれしかったですね。子育てを支援してくれるタクシーっていいいですよね。塾の送り迎えとかもしてくれるみたいですよ。子どもたちにやさしいサービスはもっともっとアピールしていいと思います。それで、他県から移り住んでくる人が増えるとうれしいですよね。子どもがいっぱいの県になってくれると、未来も安心ですよね。自然もいっぱいあるから、子育てしやすいと思います。田舎にいけばいくほど、おじいちゃん、おばあちゃんもやさしいですからね。だって、うちは歯医者なんですけど、「先生、お米をどうぞ」とか「抜きたての大根をどうぞ」とか色々持ってきてくれたりする患者さんもいて、そういう風景っていいですよね。なんだか、素朴で好きです。

戸田菜穂 広島市安佐北区出身
1990年、第15回・ホリプロタレントスカウトキャラバンで3万4千人の中からグランプリに選ばれ、1991年デビュー。以来、「ええにょぼ」「ショムニ」「anego」など多くのドラマや映画で活躍している。2010年、女流俳人・大高翔との共著で俳句の本「恋俳句レッスン」(マガジンハウス)を出版した。

「天の方舟(はこぶね)」12月9日スタート。

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