vo.3
誰かに話したい、広島がある
萩原麻未

広島のこと。広島のひと。

東日本大震災以降、日本は、人と人の心のつながりを大切に、復興へ向け、前へ前へと進ん でいます。
そして、被災地だけでなく、それぞれの地域で、「地元」「郷土」「故郷」への想 いが強くなっています。
創刊120周年を迎えた中国新聞社では、あらためて広島のすばらしさを、皆さまに知っても らうために、様々な方の声を聞き、広島の素晴らしさを再認識する企画「広島恋心。プロジェ クト」を立ち上げました。毎月1回、広島出身の著名な方の「広島への想い」を紹介しています。
VOl.5では、広島でピアノを学び、2010年に第65回ジュネーヴ国際コンクール〈ピアノ部門〉において、日本人として初めて優勝した萩原麻未さんにインタビューしました。

故郷、広島。
-現在はフランスのパリに住んでいらっしゃいますが、日本に帰ってくる感覚と、広島に帰ってくる感覚って違いますか。
違いますね。やっぱり広島は、ほっとします。
-広島に帰ってきて、いちばん最初に食べたいものは何でしょうか?
宮島口の穴子めしの『うえの』ですね。県外から遊びに来てくれた人を連れて行くのも、ここですね。広島に住んでいる頃も、よく行ってました。あと、もみじ饅頭も買いますね。最近は、あんこじゃないのもあって、クリームもみじ饅頭は好きでしたね。
-お好み焼きも食べますか?
もちろんです!
-やっぱりそこは、もちろん!なんですね?
(笑)そうですね。自分でつくるのは、層になっていて難しいので、家の近所のお店から出前をとって食べてます。あ、あと、広島風ってつけられるの嫌ですよね。広島のお好み焼きが、お好み焼きです。広島の人は、関西風って言いますから(笑)

広島人として。
-広島人って、どんな人だと思いますか?
私はずっと広島に住んでいて、両親もみんなそうなので、広島の血が濃いと思うんですけど。広島ってのんびりしてる人が多い気がします。あと、情に深くてやさしいですね。街を歩いていて、迷って道を聞いても、親切に教えてくれる人が多いです。
-自分が広島人だと思うことはありますか?
広島弁が抜けないところですね。こういうインタビューで敬語を話してると、オブラートになってると思いますけど、友だちとか同年代の仲良くなった方と話すと、普通に今も広島弁なところですね(笑)友だちからは、おばあちゃんみたいになまってるよって言われます(笑)今も広島に住んでいる親よりもなまっているって言われるくらいです。

広島の思い出。
-広島に住んでいた頃の、思い出の場所はありますか?
広島音楽高校に通っていたんですけど、丘の上に学校があって、そこから見える川沿いの風景がとてもきれいでした。結構、長い階段があって、それを上りきったときに、後ろを振り返るとすごくきれいな風景が広がってるんです。階段を上ってる途中は、我慢して振り返らずに、上りきった後に、はっと振り向くんです。そうすると、景色がぐんと目に飛び込んできて、それが楽しみで、大好きでした。
-そこは、その高校に通ってないと見れない風景ですか?
いえ、誰でも見れますよ。ぜひ、みなさんにも楽しんでもらいたいです。あと、私は毘沙門台に家があるんですけど、夜景が有名なんです。毘沙門台の東の住宅街のいちばん下の列に行くと、何も遮るものがなく、夜景が全部見える場所があるんですよ。そこからは、花火も見れますし、オススメですね。
-パリにいても、広島の風景を思い出したりしますか?
思い出しますね。思い出すと、ほっとします。広島出身の人に出会っただけで、うれしくなりますからね(笑)

広島、いいとこ。好きなとこ。
-広島のいいところって、どこだと思いますか。
ほどよく緑があって、ほどよくビルがある。大都会ではないと思いますけど、田舎でもない。私が住んでいるところは、山なので自然にあふれています。タヌキが出るくらいの場所なんですけど、30分くらい車で走ると、すぐ栄えてるところまで行ける。その感じが、ほどよくて好きですね。
-広島で、心に残る出来事はありますか?
思い出……。いっぱいありますよ。どこから掘り出していいかわからないほど、たくさんあります。でも、広島に住んでいたときに、会えた友だちとか先生とか、今、大事に思っている人たちに会えたことが、いちばんです。
-いちばんお世話になった人は誰ですか?
広島でピアノを習っていた先生ですね。7歳の頃から、高校三年まで習ってました。第二のお母さんと言っていいくらいお世話になりました。今も、広島に帰ると、会いにいってます。時々、演奏を聴いてもらったりもしてます。

広島から、世界へ。
-広島からパリへと旅立つときはどんな気持ちでしたか?
文化庁の奨学金制度で、フランスに留学したので、一年間は帰国できないルールだったんです。
なので必然的に一年間は帰って来れない……。不安もありました。でも、楽しみでもありました。広島を離れるのはすごく寂しい気持ちでしたけど、同時にありがとうっていう気持ちもありましたね。
-ピアノは何歳から始めたんですか?
5歳からですね。ピアノ以外にも習い事をしたことはあったんですが、ピアノがいちばん好きで続けました。
-やめたいと思ったことはありませんか?
全然、ないですね。弾いていることが、自然だったので。

広島と、ピアノ。
-8月と11月に広島で演奏される予定ですが、広島で演奏するのは、他で演奏するのと気分が違いますか?
もちろん違いますね。小さな頃から広島で弾かせていただいていたので、地元で弾けるということは私にとってとても幸せなことです。」最近、広島で弾けてなかったので『やっと広島で弾けるんだ!』ってうれしくなります。
-広島出身の方の演奏ということで、普段ピアノをあまり聴かない方やはじめての方も集まると思いますが、どんな風に、どんな気持ちで聴いてほしいですか?
クラシックは、敷居が高かったり、椅子に座ってずっと動けなくて静かにしてなきゃいけないようなイメージがあると思います。でも、緊張して聴くのではなく、ただ座ってリラックスして、聴こえたままを感じてもらえればいいんです。何も考えず、楽しんでもらえれば。
-お友だちや家族も呼ぶんですか?
はい。でも、私恥ずかしがり屋なんで『興味があったら来てね』と言うくらいにしか誘えないです。強要はできないんです。なので、私の性格をわかってるお友だちは、こっそり来てくれたりします。家族もいつも来てくれますね。

-最後に広島が、今後どんな街になればいいと思いますか?
もっと、他の県の方に、来てもらいたいと思いますね。お好み焼きとかもみじ饅頭がなくても、おいしいものはいっぱいありますし、キレイな場所もいっぱいあると思うので、一度来てもらえれば、気に入ってくれると思うんですよ。
-やっぱり自分が好きな街は、みんなに好きになってもらいたいんですね?
「自分が大好きなんで、そう思いますね。あ、あと、お好み焼きが広島風って言われないようになってほしいなって思います(笑)

萩原麻未 広島市安佐南区出身

今、注目を集める若手ピアニスト。広島音楽高等学校を卒業後、フランスに留学。2010年11月に行われた第65回ジュネーヴ国際コンクール〈ピアノ部門〉において、日本人として初めて優勝。

2012年8月3日(金)
広島/上野学園ホール (旧)ALSOKホール
第4回広島文化賞
新人賞受賞者成果発表
「萩原麻未ピアノコンサート ~チェリスト カーリン・バーテルス氏を迎えて」
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